滝に到着した。
これから私達の舞台となる地は、清らかなベールをまとっていた。
そして、鳥居をくぐった瞬間から、また一線超えた聖地へと足を踏み入れた感じだ。
すぐに滝に入る訳ではなく、下記の手順で降神の儀式をし、神様を迎える。
ふーーぅ…、やっと滝に入る前の儀式が終わった。
大きな声を出し、アドレナリン全開!!
心中、やったるで、オ”ーー!!!という気合いが入る。
6時00分。いよいよ水の中に入る。湧水冷たし…。
まず大声を出して、足、手、顔、背中、胸と順番に水をかける。
最初に神主さんが、滝行の仕方を見せてくれた。
やり方を伝授して頂いたところで、次は修行者12名が順番に滝行に挑む!
夫婦や家族など、数名で滝に打たれたい方は、それでも良し。
順番を待つ間も、ドキドキする。
いよいよ私の番が回ってきた。気合いが入る!
滝の正面に立ち、指刃を作る。
指刃とは、人差し指と中指で、刃の形に見立てるのだ。
カタカナの「ノ」の書くように、滝を切る。
滝を切る時に『エ〝イィー!!』と気合を入れて、指刃を振り下ろす。
その後、滝に入る。
背を滝の壁につけ、滝の崩落を全身で受け止める。
大きな声で『祓戸大神(はらえどのおおかみ)…、祓戸大神…、祓戸大神…』と呪文(マントラ)を連唱しつつ振魂を行う。
『祓戸大神』を30回唱えたところで、最後の指刃。
拷問w…からの解放となる。
滝行をしている時の、心中はというと…、
冷たい、寒いの感情よりも、もっと違う方に意識が向く。
自分の中心に意識が向くのである。
それは、過去でも未来でもない、JUST NOWの自分に意識が落ちる。
そう、意識が魂に向かって、どんどん落ちていくのだ。
体は、アドレナリン全開のハイな状態だが、心は呪文(祓戸大神)に集中し、無心の状態に近づいた。
推測だが、上級者は無心になったあとに、そこに光や神を感じ、一体化するのではないかと思う。
滝行とは、自分を極限に追い込み、生と死の危機を体験することにより、超越状態になる。
その超越した意識状態とは、人によって振り幅がある。
たとえ感じ取れていなくても、魂レベルでは浄化や進化などしていると推測する。
滝行の身体的な効果としては、背中に憑いていた物や、心に憑いていた負の想いなど、邪気が払われたことを、強く実感した。
滝に入ること3回。
↑本人は真剣なだけに、笑える…w
唇青いし…。
格好が、お釈迦様の「天上天下唯我独尊」っぽいけど…w
滝行を終え、皆で終わりの儀式を行う。
昇神の儀式で神様を見送り、感謝の思いを込める。
最後に皆で一本締めの拍手をし、「ありがとうございました」と言う。
まずは、頑張った自分をたたえ、そして相手もたたえる。
全ての行を終え、鳥居をくぐり、写真をパチリ…。
心身ともに憑いていた物が落ちた表情なのが分かるだろうか。
身も心も軽やかで、視界がクリアなのだ。
顔は嬉しさで緩み、口角は上がりっぱなし。
体はアドレナリン全開なので、HAPPY過ぎる〜♪
着替えをすませ、ギックリ腰用のベルトを再度付ける。
ギックリ腰は「冷やしては駄目!」が鉄則だが、なんとか滝で死なずに済んだ。
ありがたし祓戸大神…。
清らかな気持ちで聖地を離れる。
帰りも行きと同様の約束を守り、宿坊に向かう。
帰りの足取りは早く、途中小雨も降ってきた。
心中は小雨など気にならず、念願の滝行を出来た満足感にひたっていた。
50分のトレッキングを終え、7時40分に宿坊に到着。
御神前にて、無事滝行を終え、帰宅したことを報告。
神主さんに、過去の滝行の写真を見せてもらった。
冬の滝行、これは過酷過ぎる…。
死ぬだろう…。
8時00分、朝食をいただく。
行の後の朝食は、これまた美味い!
薬膳粥が体に染み渡る。
部屋に帰り、放心状態…。
お腹もいっぱいになり、ここで寝たい。
確実に、気持ちの良い睡眠が待ち受けている。
チェックアウトの時間が迫っていなければ、そうしていた。
最後に部屋で、御嶽神社の方向を向き、瞑想をして心を落ち着ける。
10時チェックアウト。
お世話になりました。
宿を出ようと思い、トレッキングシューズを履こうとした横に、何やら紙が置いてある。
中を見ると…、
『わたなべさん……(涙)』
涙ぐんでしまうと同時に、心の中が温かくなった。
そう、このわたなべさんとは昨晩、共同風呂で一緒になった方だ。
身も知らずのおばさんだが、同じ滝行ミッションに参加する共通点があったため、初対面だがベラベラと身の上話をした、裸の仲なのだ。
旅の醍醐味、人との一期一会を、久しぶりに感じた瞬間だった。
心がホットになりながら、宿坊を後にする。
旅の最終目的地、御嶽神社への足取りは軽い。
心身ともに払い清められる「滝行での禊ぎ」が終わり、御嶽神社に向かう。
この手順が、正式な神社の参拝方法なんだと噛み締める。
『来年もまた…』と、心のどこかで、神様と約束をした…、気がした。